貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

内田百間内田百間集成17 うつつにぞ見る』(ちくま文庫)
百間と交流があったりなかったりした人達の人物論集。吉田茂との会談を出版社から持ちかけられても総理大臣などと云うものは好きではない、とはねつける。が、ご馳走してくれるんなら良い、とも言いだす。相変わらずの傍若無人な振る舞いに独特な滑稽さがあるのでした。
ウラジミール・ナボコフ『青白い炎』(ちくま文庫)
ナボコフの最高傑作との呼び声も高い本作は構成からして前代未聞。架空の詩人による長編詩「青白い炎」に詩人の隣人であり大学の教授でもある人物が注釈と序文をつけて研究書の体裁をとっている。しかしどうやらこの注釈を書いた人物は狂人の様で、異様な注釈が展開される。架空の王国から王が亡命する話などは幻想小説でも読んでいる様な気分。この本はナボコフに依る詩集でもあり、詩の注釈でもあり、小説でもある。多面的、技巧的でしっかり読み解こうとしたらキリがないだろうと思う程。それなりに適当に読んだが、ナボコフの筆力に圧倒された。

内田百けん集成 17 (ちくま文庫) 青白い炎 (ちくま文庫)