貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

レオポルド・フォン・ザッヘル・マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』(河出文庫
サディズムの語源はサド侯爵、そしてマゾヒズムの語源がこの人、マゾッホさん。そしてこの2つの性的倒錯を分類、というか名付けたのが性科学者のクラフト・エヴィング博士。種村季弘の翻訳は澁澤龍彦のサドの翻訳に似たテイストで独特の言い回しが面白い。「私はあなたにお熱なのよ」といった感じ。自分には単純に変態な小説を面白がる傾向はあるけれど、それだけじゃなくて、マゾヒズムのイメージの源はキリスト教の殉教者にあるっぽいのが面白かった。例えば全身を矢で刺された聖セバスチャンなんかはそういったイメージの典型。(リンク先の画像はマンテーニャの描いた聖セバスチャン)そういった殉教者の話が一般的に知られていないのは僕らがキリスト教徒じゃないからと言うのは勿論だけれども、聖書に載っていない、というのも大きいかも。聖人のエピソードはヤコヴス・デ・ウォラギネの『黄金伝説』と言う本に載っているけれど、これがあんまり売ってないんだなぁ。しかも1万くらいするので神保町で見かけてもおいそれと買えず。そこら辺の話をちゃんと読めば宗教画とかが面白くてしょうがなくなるんだろうなぁ、と思う今日この頃。あ、そうそう、なんとマゾッホはこの小説をなぞる様な人生を送る事になるからビックリ。自らの体験を創作に結び付けていく事はあっても、自らの小説を人生がなぞっていくという奇妙な逆転関係は興味深い。伝記が読みたい作家No1。

ISBN:4309460089