貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

茂木健一郎『脳内現象 <私>はいかに創られるか』(NHK出版)
コテコテの文系なので所々難しいと感じる所もあったけれどクオリアとかメタ認知とか非常に興味深い。メタ認知と言うのは自分が世界を認識している事自体を、言わば外側から認識し直す心の動きの事。自分はこういう風に感じてたんだな、こんな風に考えてたんだな、と言った事への気付きの様なものと考えて良いのかな。

 私たちが世界について様々な事を学び、様々な気付きを重ねていく過程とは、つまりはメタ認知の積み重ねなのである。メタ認知において、知識は、外からやってくるのではない。自分の中に既にあった認知の要素を、その「外側」に立って眺める事で新たな意味を獲得すると言うのが、メタ認知と言うダイナミックなプロセスの本質である。

 メタ認知を通して、人間は、それまで慣れ親しみ、見慣れたと思っていた事について、全く新しい視点を獲得する事が可能になるのだ。

「自分の中に既にあった認知の要素」を外から眺めると言う所がポイント。新たな視点を獲得する時って「新たな視点」であるにも関わらず、気づいた時には前から感じていた、知っていた、どうして気づかなかったんだろう、といった既視感を伴うことが多い。多いと言うか、ほぼ確実に感じている気がする。この既視感は即ち「自分の中に既にあった認知の要素」を外から新たに眺めているからに他ならない。身近な例では斬新なコピーに心を動かされている時とか、コピーによってメタ認知が引き起こされている気がする。あー、なるほど、あーうまいこというなぁ、というこの感覚。そもそもこの文章を読んであ―なるほど、と思ったら、それこそメタ認知が起こっているのかも。そういう意味で「私たちが世界について様々な事を学び、様々な気付きを重ねていく過程とは、つまりはメタ認知の積み重ねなのである。」という事になるんだろうな。そう言えば鬱病患者が自分が鬱病である事に気づくと回復すると言う話を聞いた事があるけれどこれもきっとある種のメタ認知の例なんだろうか。この人の本は他にも読んでみたい、なるべく分かりやすそうなものを。

脳内現象 (NHKブックス)