貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

加茂英司『再販制と日本型流通システム』
再販制がある(もしくはあった)業界って相当多い事を知らなんだ。薬や化粧品、電機機器まで。再販制が悪い制度であるかの様な言説が多いけれども一概には言えない事も分かった。独占禁止法は企業間の競争を促進して消費者の利益を守ることが理念としてあるわけだけど、それでは再販制は企業間の競争を抑制して消費者の利益を妨げているのか?という話になる。再販売時の価格を製造社サイドが指示して値下げを防ぐと言うのはカルテルの様な価格統制を想起させるけれども、カルテルは同業同士が横の繋がりで企むものなので、もちろん競争は阻害される。が、再販制はあくまでも企業と流通という縦の関係なので同業他社との競争を妨げているか、というと一概には言えない。再販売価格をいくら維持しようとしても、同業他社が価格を引き下げてくれば対策を打たなければ売れなくなるのは当然の事だからだ。次に、消費者の利益、について。消費者の利益、と言うのが果たしてなるべく安く買える事だけなのか?という問題が。再販制は再販制が無い時に比べれば価格競争を和らげるが、それを消費者の利益が損なわれていると言うのは短絡的で、メーカーは激しい価格競争になる心配が無かったからこそ研究開発に専念して、付加価値の高い新商品を次々と産み出していく事が出来た、と考える事もできる。また、書籍に関しては、再販制が無くなると、「売上としては大きくないが、文化的価値の高いもの」が出版されなくなってしまう恐れがある。それに消費者は書籍に価格競争を求めているんだろうか?価格競争がなじまない商品な気がするが・・・。まぁ色々考えさせられる1冊だった。

 

再販制と日本型流通システム―中小流通業者の業種別生産性比較