貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

田中一光田中一光自伝 われらデザインの時代』(白水Uブックス)
やや期待はずれだった。原因は2つほどあるかも。最大の要因は図版の掲載が一切ない事。様々な作品に言及しても図版がないので今一イメージがわかない。これは、ホント致命的。もう1つは、田中一光が余り自慢しないこと。どちらかと言うと当時お世話になった人への感謝ばかりなので、もっと田中一光のことが知りたいんだ、と言う不満が残る。自伝より評伝の方がそういう意味ではずっと面白いタイプの人なんだろう。それにしても、日本のアートシーンへの西武の果たした役割の大きさに唸らされる。企業と文化を結び付けあれほど大規模かつ長期間に渡るメセナ活動をした西武は日本の企業史の中でも特筆に値する。そういえば、数年前、田中一光の死後、彼の回顧展が開かれる時、それと知らずその美術館にいた僕は会場で三宅一生を始めとした蒼々たるメンツが会場入りするのを目撃する。開幕直前の関係者向けの公開日だったのだ。今思えばあの時いた安藤忠雄は、時の人だからそこにいたのではなくて、若かりし時、田中一光の自宅を設計していた縁があったんだな。

 

田中一光自伝 われらデザインの時代 (白水uブックス)