貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

金子光晴金子光晴全集7 どくろ杯・ねむれ巴里・西ひがし』(中央公論社)
金子光晴の旅行記三部作、ようやく読了。東南アジア経由、巴里へ。「どくろ杯」*1は出発、「ねむれ巴里」*2は滞在、「西ひがし」*3は帰路、おおまかに時期を分けるとこんな感じ。超極貧旅行で内容はほとんど行き当たりばったりの金策の話。絵を描いて在留日本人に売り付けたり、金の無心をしたり。金子は男娼以外は何でもやった、という噂がたった様だが、これを読むとその噂もあながち嘘じゃないかも。物凄いバイタリティだ。芸術の都巴里、といった憧れは今も昔も同じ様だが、当時巴里へ留学した芸術家の卵達の生活は相当悲惨だった様だ。皆ごろつき同然の暮らし。日本へ帰ろうにも帰る金も無く、気が狂って強制送還される人もいたし、それを聞いて気が狂ったふりをした人もいたという。日本が戦争に突っ込んでいく様子を海外から見ていたわけで、支那事変など暴走する日本や日本人に対する外人の反応なども興味深い。そういう意味でも貴重な記録。