貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

長田弘『詩人であること』(岩波同時代ライブラリー)
この人の言葉に関する文章は良い。さすが詩人。あと、アンデルセンが読みたくなる。「アンデルセンの物語の中にはいつも風が吹いている」とか言われると、やっぱり無性に読みたくなってしまう。確か岩波文庫でかなりの冊数になった気がするけれど・・・

言葉が意味をあらわすのは、言葉が意味のなかに閉じこめられるということではない。言葉がみずから意味しうるものの限界をしるしづけ、そうすることによって言葉が意味しえないものが何であるかを、はっきり指ししめすと言うことである。本の活字が行間をあけて組まれるように、言葉は言葉にならないものを行間に持つ言葉なのだ。懐中電灯が光をつつむ闇をさそいだすように、言葉は言葉をつつんでいる沈黙をさそいだすことができるのでなければならない。言葉は、言葉の限界にゆきつく努力によって言葉になるので、言葉を読むとは言葉の限界を確かめ確かめしながら読んでゆくということだ。

 

「読むこと」より

 

詩人であること (同時代ライブラリー (323))