貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

江戸川乱歩江戸川乱歩全集5 押絵と旅する男』(光文社文庫)
標題作は推理小説と言う形から大きく逸脱してるけどなかなか良かった。男が絵の中の女に恋して、弟に双眼鏡を逆さに覗いて自分を見て貰ったらどんどん小さくなって絵の中に入っちゃった、みたいな荒唐無稽なお話なのだけど、なんか幻想的で良いのよね。小道具が古びた双眼鏡ってあたりもなんかね。「蟲」は検閲されまくりで衝撃。意欲作でなかなかオモロイけど死体の描写とかがちとグロイ。んで、次の「蜘蛛男」は初めて読んだ長篇なのだけど、犯人発覚後第2部スタート、という連載引き延ばし作戦?みたいなのがあって、ちょっとダラダラし過ぎ。それでも田んぼで犯人と思しき農民と差し向いになって睨み合う下りのうだるような暑さと緊張感の描写は秀逸。「盲獣」になるとちょっと幻想・怪奇というよりは猟奇。バラバラ殺人などの猟奇的な殺人の描写を繰り返されるのはつまらない。乱歩において猟奇はメインのテーマではないと思うので。

 

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)