貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

『金子光晴全集6 マレー蘭印紀行・詩人・新雑事秘辛』(中央公論社)

全集は1冊読むのに時間かかる。まぁ3冊分だから当たり前と言えば当たり前だけど。金子光晴と言えば詩人だけど、今は詩人としての金子光晴にはあまり興味が無い。じゃあなんで全集か、と言うと旅人としての金子光晴に興味があるから。東南アジアからヨーロッパへ、生涯二回大きな旅をしている。二回目の旅は実に5年間かけていると言うから驚き。沢木耕太郎もビックリの旅人ぶりなのである。「マレー蘭印紀行*1」は読んで字の如く東南アジアを旅した時の紀行文。情景描写等に詩人ならではの詩的な表現が多い。が、必ずしもその表現が読みやすい訳ではない。そこそこ面白い。「詩人*2」は自ら綴った自伝。基本的に自伝は過去を再構成するときに面白い所を抜き出して、それなりに波瀾万丈に仕上げるものなので、読んでいて面白い。後半は旅の話もちょろっと混ざるが、幼少期の怪しい性体験の告白等、暗部を曝け出していて面白い。

詩人 金子光晴自伝 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)