貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

植草甚一スクラップ・ブック15 マイルスとコルトレーンの日々』(晶文社
まずい、マイルスとコルトレーンに浸りたくなってしまった。コルトレーンセロニアス・モンクがファイブ・スポットで共演した伝説のライブがあって、それは録音が存在しないと思われていたのだけど、コルトレーンがインタビューで録音したテープを持っていると発言、しかし長らくその存在は謎のまま。今ではそのテープが本当に発見されてCD化されたのだけど、そのきっかけとなった重要なインタビューをアメリカの雑誌かなんかで見かけた植草甚一が早速紹介していたのに驚き!あ―、このインタビューだぁ、と何とも言えぬ感慨が。それにしても夢中になってジャズを語る姿はホントに微笑ましくて良い。下の引用はサルトルがジャズについて語った一節。

 ジャズが演奏されている。みんなが熱中して聴いている。その人たちは夢なんか見てはいないだろう。ショパンは夢を見さすかもしれないが、ジャズはちがうんだ。ジャズはとりこにしてしまい、そのなかから離さない。ほかのことは考えさせないようにしてしまう。ジャズはドライで兇暴で無慈悲なものだ。それが黒人奴隷の百年前からの悲しい歌だと考えるのは間違っているし、機械にたたきのめされた白人たちにとっての悲しい夢だと考えられるのも間違っている。ごらん!トランペットを吹いている太った男が、からだを動かしながら、ありったけの息をしぼりだしているだろう。ピアニストは情け容赦もなく叩きまくっているではないか。ベーシストの弦のはじきかたを見ていても、まるでそれに苦痛をあたえているような気持ちになる。そうだ、彼らはこうして君たちの最良の個所めがけて話しかけようとし、そのため一所懸命になっているのだ。

 

(「マイルスが夢に出てきちゃった」より P12)

 

マイルスとコルトレーンの日々 (植草甚一スクラップ・ブック)