貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

内田百間内田百間集成23 百鬼園戦後日記』(ちくま文庫)
長らく積読状態で放置していたものを読了。これにて全24巻の百間集成完読なり。それまでも色々な出版社の文庫でバラバラに出ていたがこういった形でまとめてもらえると実に読み易いし、何よりも書店で目立つ。あと、再評価の気運が一気に高まるので本当に素晴らしい企画だった。2年間、全24巻の刊行が若い世代に百間の名を知らしめた功績は少なくないだろう。実際同期にも百間好きですという女の子がちらほらいるし。この巻は戦後の日記だけれども、敗戦について語るような大仰なことは一切書かれていない。飄々と日々の生活について書かれているだけで、とりわけその日に飲む酒を確保するのに苦労している姿が印象的。酒を飲めた日のささやかな達成感、「今晩は無酒也」の欠乏感がいちいち面白い。

 

百鬼園戦後日記―内田百けん集成〈23〉 ちくま文庫