貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

Bill Henson『MNEMOSYNE』(青幻舎)
ABCで立ち読みして衝撃の出会い。いやはやびっくりした。序盤のモノクロの「Untitled Sequence」が流れるように目に飛び込んできて好き。シークエンスなんですよ、まさに。そして全体の雰囲気を一言で言うなら「Melancholic Uncertainty」。うまく訳せないけど、これ、ピッタリ。
庄野潤三『ピアノの音』(講談社文芸文庫
ピアノの音、もう書名からしてなんか良い。この本でやっと庄野潤三の魅力に開眼。庄野潤三夫妻の日常が延々と語られるだけなのだが、にやにやしながら味わってしまった。子煩悩ならぬ孫煩悩。妻が弾くピアノの音。毎晩夫の吹くハーモニカに合わせて童謡を歌う妻。圧倒的に長閑で、作られた物語の作為を感じさせない純粋な言葉。そう言えば、谷川俊太郎が小説は嫌いだ、と言っていた気持ち、わかるな。物語を作る事に一生懸命で、そんな事ばかりに力を入れて競っていても、飽きるよね。「結局小説は人間の業を描いてるだけ、業の部分を追求して、それが良く書けると人間観察力が優れているなんて褒められる。」それで良いのかね、小説。一昔前は、もっと多様な小説の書き手がいたんだけどなぁ。

 

MNEMOSYNE - ムネモシュネ ピアノの音 (講談社文芸文庫)