貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

アントン・チェーホフ『たわむれ』(未知谷
「わたしは あなたを 愛してます ナージャ!」急な丘から橇で滑り降りている時だけ囁かれる愛の告白。でも女は橇が怖くて仕方なく、滑り降りている間は無我夢中。なので、その言葉が空耳なのか半信半疑。確かめる為に、何度も橇で滑り降りる、たったそれだけの話なんですが、なんか良いんですよ。いじましいって言うのかな。疲れた心がほっこり温まります。
リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(ハヤカワepi文庫)
アメリカのとある図書館。ここでは自分で書いた本を持ち込んで好きな場所に並べる事ができる。そこで働くたった一人の図書館員が、素敵な女生と出会って、子供を堕さなくちゃいけなくなって、3年間、24時間ずーっと離れる事のなかったその図書館を1日だけ離れて戻ってくるまでのお話。半分現実、半分ファンタジー、夢のような浮遊感が作品全体に流れている素敵な本です。

 

たわむれ (チェーホフ・コレクション) 愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)