貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

吉岡実『現代詩文庫14 吉岡実詩集』(思潮社
昭和後期最大の詩人とも言われる吉岡実。『サフラン摘み』や『薬玉』と言った詩集の評価が高い。装丁も美しくいつか買いたい。その言葉は剃刀のように鋭利にして陰美。ISBN:4783707138

四人の僧侶

めいめいの勤めにはげむ

聖人形をおろし

磔に牝牛を掲げ

一人が一人の頭髪を剃り

死んだ一人が祈祷し

他の一人が棺をつくるとき

深夜の人里から押しよせる分娩の洪水

四人がいっせいに立ちあがる

不具の四つのアンブレラ

美しい壁と天井張り

そこに穴があらわれ

雨がふりだす

 

 

詩集『僧侶』より「僧侶」抜粋