貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

原研哉『デザインのデザイン』(岩波書店
非常に面白かった。情報の質を高める事でより深いコミュニケーションを達成する。これはデザインだけでなくて編集にも通じる事のはず。「情報デザインのゴールはユーザーに力を与えること」というリチャード・ソール・ワーマンの言葉は記憶しておこう。ある情報が世の中に広まったり、物が売れたり、感動させたり、そういったことの裏にはこの力が働いているはず、という考え方に基づく一言。しかしなんとまぁここでも「視点」の重要性に行き当たった。視点をちょっとずらす事で世界は違った見え方をしてくる。印象的だったのは一流レストランのテーブルクロスはなぜ白いのか、と言う話。テーブルクロスは言うまでも無く汚れやすい。ゆえに汚れが目立たないという機能性の点からは濃い色のテーブルクロスの方が良いはずなのだ。そこにあえて真っ白なテーブルクロスを持ってくると言う事は、最高の清潔さを備えたサービスの表明に他ならない。そういうコミュニケーションのあり方がある事を頭の片隅に置いておくと、何かと役に立つ気がする。逆から考えるとわかりやすいかも。最高の清潔さを備えたサービスでお待ちしています、ということをどうすれば相手に伝えられるのか?「白いテーブルクロスを使いましょう」という結論を導き出すのは天才的だと思われる。

 

 新奇なものをつくり出すだけが創造性ではない。見慣れたものを未知なるものとして再発見できる感性も同じく創造性である。既に手にしていながらその価値に気づかないでいる膨大な文化の蓄積とともに僕らは生きている。それらを未使用の資源として活用できる能力は、無から有を生み出すのと同様に創造的である。僕らの足下には巨大な鉱脈が手つかずのまま埋もれている。整数に対する小数のように、ものの見方は無限にあり、そのほとんどはまだ発見されていない。それらを目覚めさせ活性させることが「認識を肥やす」ことであり、ものと人間の関係を豊かにすることに繋がる。

 

デザインのデザイン