貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

ジェフリー・フォード『白い果実』(国書刊行会
1997年の世界幻想文学大賞受賞作。これがめっぽう面白い。三部作の第一部らしいのだけど続きはいつ出ることやら・・・。金原瑞人らが下訳したものを山尾悠子が自らの文体に編み上げていくと言う作業によって独特な世界感を醸し出す文体に。原文がどういう文体なのかは知らんが、金原瑞人をして原文を越えてしまったかも知れない、と言わしめた程の完成度。ちなみに金原瑞人金原ひとみのお父さんだったりする。主人公のイメージはまるで『スリーピー・ホロウ』のジョニー・デップ。彼の職業は人の容貌を観察することでその性格やヒミツを解読する難解な学問を修めた官吏。ある種変質的なまでの細部へのこだわりを旨とする職業な訳で幻想小説にはお誂え向きなのかも。「幻想」ってあやふやで抽象的な世界と言うよりはむしろ輪郭のハッキリした世界だったりする。例えばボッシュの絵の様に細密さの上に幻想は成り立っているんだな。
植草甚一スクラップ・ブック8 江戸川乱歩と私』
推理小説はほとんど読まないのだけどこういう本を一冊読むとさすがに読んでみようかな、という気にもなる訳で。しかも絶賛されつつも日本で商業的に成功したことがないと言うシムノンとかに凄く興味をひかれた。ミッキー・スピレーンに関する記述もあって、何ものなのか、詳しい情報を初めて知った。スピレーンと言えばジョン・ゾーン、みたいな事しか知らなかったので。たまに趣味の読書で頭をリラックスさせるのにミステリーとかは最適なのかもしれない。作戦通りまた1つ新たな分野に興味を持てるかも。

 

白い果実 江戸川乱歩と私 (植草甚一スクラップ・ブック)