貼雑歩録 Ver.2.0

日々の情報から拡散する好奇心と、思考の断片をスクラップブックのように書き留める試み。

谷川俊太郎『現代詩文庫27 谷川俊太郎詩集』(思潮社
連作「鳥羽」はまぁまぁ良い感じだけど、これといった1編がない気がする。戯曲もそこそこ面白かった。「朝のリレー」はたまたま大衆受けしたけれど、詩人としてこの人の力量ってどの程度のものなんだろうか。荒地派や吉増などに比べると正直あんま期待してないんだけど、せっかくなので他にも読んでみる予定。ISBN:478370726X
須賀敦子『霧のむこうに住みたい』(河出書房新社
新宿のジュンク堂で担当編集者のポップが置いてあり思わず購入した1冊。帯に解説、江國香織と入っているのが少々気にいらないのだけど、それでも1人でも多くの人が須賀敦子に興味を持ってくれるんであればアリだな、と思うようになったのは書店研修に行ったせいなのかもしれない。下の文章は子供の頃夜行列車に乗った時の回想。

そのとき、まったく唐突に、ひとつの考えがまるで季節はずれの雪のように降ってきてわたしの意識をゆさぶった。

《この列車は、ひとつひとつの駅でひろわれるのを待っている「時間」を、いわば集金人のようにひとつひとつ集めながら走っているのだ。列車が「時間」にしたがって走っているのではなくて。

ひろわれた「時間」は、列車のおかげではじめてひとつのつながった流れになる。いっぽう、列車にひろいそこなわれた「時間」は、あちこちの駅で孤立して朝を迎え、そのまま、摘まれないキノコみたいにくさってしまう。

列車がこの仕事をするのは、夜だけだ。夜になると、「時間」はつめたい流れ星のように空から降ってきて、駅で列車に連れ去られるのを待っている》

 

 

「となり町の山車のように」より P.116

 

霧のむこうに住みたい